スピーカー用コイル測定記事の一つですが、一記事ずつ見ても分かりにくいので(1)の概要記事から辿っていくことをお勧めします。
測定した各コイルの紹介は(2)の記事にあります。
概要
今回は信号レベル別のインダクタンス特性です。
(3)でインダクタンスをスイープ測定した際、一部コア入りは100Hz付近でインダクタンスのグラフに段差が出来ました。
これはLCRメーター側の信号レベルが切り変わったためと分かりましたが、目立った段差が出来た理由はこれらのコイルは信号レベルによってインダクタンスが変動するからではないかと思い、今回定電圧、定電流の2種で信号レベルを変えてインダクタンスを測定してみることにしました。
定電圧、定電流の2種で測定した理由は、スピーカーを純抵抗負荷と見なすとコイルはLPFのカットオフ周波数から下がるほど定電流動作、上がるほど定電圧動作に近づくからです。
測定結果
今回明確に変化があったのは8種のうちERSEコア コイルとJantzenトロイダルコア コイルの2つでした。
測定レベルの違いでインダクタンスの(ほぼ)変化しなかったコイルの代表としてTANGO リッツ空芯を貼り、他は省略します。
レベル変化が定電流で対数的、定電圧でそうなっていないのは単純に測定時のミスです。手動測定でめんどくさかったのでやり直す気はありません。
10kHz以上で多少変動が見られますが、一般的な1~3kHzのクロスではこのあたりの周波数ではユニットのインピーダンスに対してコイルのインピーダンスがかなり大きくなるため実際にはほとんど影響はありません。
続いて変動のあったERSEコア入りです
0.003Aから0.03Aの変化でインダクタンスがおよそ0.08mHほど変化しており、インダクタンスが信号電流によって変化している様子が良く分かります。
信号レベルが低く、レベル変化としても20dB程度なので実際の使用時には音声信号の大小によってさらに大きく変化する可能性もあります。
前回のような定レベルスイープでは検出できませんが、信号レベルによってコイルとしての挙動が異なるというのはこれもコアの歪みということになります。
続いてJantzen トロイダルです。
ERSE以上に大きく変化しています。
JantzenのHPではこのコイルを中高域のネットワークに使わないよう注意がありますが、こういった特性が原因かもしれません。
まとめ
一部コア入りコイルは信号レベルによりインダクタンス変化がありました。
これらのインダクタンス変化は、コアのヒステリシスループの傾き(透磁率)が信号レベルによって変わるということ思いますが、正直なところコアに関する詳しい知識も無くデータもあまり見つからないので良く分かりません。
インダクタンスは信号レベルを上げると上昇しているので飽和という事は無さそうです。
詳しい方いらっしゃいましたら教えて頂けると助かります。
さて、こうしてグラフをみると数~数十%インダクタンスが変化するのは結構まずい気もしますが、実際のところどれくらい影響するのかという点を今回の結果の確認を含めて次回記事で測定します。