スピーカー用コイルの測定 (4)歪率特性

 

スピーカー用コイル測定記事の一つですが、一記事ずつ見ても分かりにくいので(1)の概要記事から辿っていくことをお勧めします。

測定した各コイルの紹介は(2)の記事にあります。

概要

今回はコア入りコイルで懸念される、歪みについての測定です。

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測ったコイル類

測定方法

 

パワーアンプに、1.2mHの被測定コイルと6.8Ωのダミーロードで形成したLPFを接続し、抵抗両端に出る信号の歪率を測定しました。

 

はじめに、6.8Ωダミーロードのみ負荷にした歪率です。各1V,2.5V,5V,10Vで、抵抗の両端電圧を基準にしています。

これは測定環境の歪みで、測定下限ということになります。

黄線が2次,灰線が3次,赤線が4次高調波です。歪率は右軸に%で表示してあります。

 

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アンプ 1V,2.5V,5V,10V

測定結果

 空芯

まず、空芯コイルはメーカーや構造に関わらず歪みがでませんでしたので、代表してMundorf の空芯コイルを掲載します。

10V出力時、中低域で歪みが上昇しているように見えますが、負荷変動によるアンプの歪みと思われます。

 

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Mundorf 空芯 1V,2.5V,5V,10V

 Jantzen Pコア

中域で明確に歪みがでました。低いレベルでも3次高調波が0.3%ほどあるので、多少耳につくのではないかと思います。

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Jantzen Pコア 1V,2.5V,5V,10V

 コイズミ フェライトコア

こちらも低域で歪みが出ました。2.5Vではほとんど見えませんが、5Vあたりから3次高調波が上昇してきます。

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コイズミ フェライトコア 1V,2.5V,5V,10V

 ERSE SUPERQ コア

コア入りで唯一歪みが見えません。優秀なようです。

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ERSE SUPERQ 1V,2.5V,5V,10V

 Jantzen Cコア

トロイダルコアのコイルです。同社Pコアほどではありませんが、こちらも中域で歪みが見えます。

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Jantzen Cコア 1V,2.5V,5V,10V

 

まとめ

 

単純比較できませんが、歪みの多さは

Jantzen Pコア > コイズミ フェライト > Jantzen  Cコア > ERSE SUPERQ ≧ 空芯

という感じでしょうか。

 

コアによって中域に歪みが出たり、低域に歪みが出たり、歪みが出なかったりと、コアコイルだからどう、という単純な判断は出来なさそうです。

気になる方は空芯コイルを使うか、自分で測ってみるのが良いと思います。