スピーカーのバッフル角落としと軸上(外)特性

 

はじめに

普通、角を落としていないバッフルの適当な位置にツイーターを付けると回折効果により周波数特性に凹凸が出来ます。

 

これはバッフルの角を潰したりユニットをエッジに近づけることで軽減でき、また別のアプローチとしてホーン(Waveguide)等による改善もあります。

 

ユニットをエッジに近づけるという方法はある程度実現可能ですが、フランジ等ユニットのサイズの制約から、限界があります。

 角を潰すという点では理想は曲面バッフルですが、加工難度の面で、一般には角をRまたは斜めカットで落とす、あるいは多面体カットすることになります。

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(頼んで作っていただいた多面体カットバッフル)

今回は、角を落とすことでどの程度効果が有るかをシミュレーションで見てみます。

 

角を落とさない(普通のバッフル)

バッフルサイズは以前作った自作機に合わせH300×W200mmで、ツイーター位置はバッフル中央上から75mmです。

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右図がシミュレーションF特で、軸上(黒線),水平30度(青線),水平60度(赤線)です。

このバッフルの場合、約3kHzに4dB程度の目立つディップが出来ています。

普通バッフル幅が広いほどこのディップ周波数は下がるので、幅を広くしツイーター使用帯域外にディップを追い込む手もありますが、特に2WAY小型ブックシェルフには中々難しい選択です。 

 

角を落とす(45度カットバッフル)

そこで対策として以下に1cm~8cm、角をカットしたバッフルのシミュレーション特性を示します。

結果はあくまでこのバッフルの場合です。

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1cmカット

多少効果が現れていますが、カットなしとあまりど変わりません。

 

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3cmカット

軸上ディップの改善が明確に見られ、またその周波数が僅かに高域に遷移しています。

 

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5cmカット

ディップが2dB範囲程度に収まり綺麗になりました。

2~3kHz付近はかなりましになりましたが、変わりに5~6kHz付近もやや乱れています。

  

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6.5cmカット

かなり綺麗な特性です。

とはいえバッフル平面部が幅7cmしかありませんので、一般的な105mmフランジのツイーターでは不可能です。

 

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8cmカット

ほぼツイーター振動版の幅までカットされた状態です。

60度にピークがあるものの比較的綺麗ですが、バッフルステップ周波数も上昇して使いにくそうです。

 

まとめ

という訳で、角落とは軸上軸外の周波数特性を整えるのにおおよそ有利なようです。

 

しかし、切りすぎもバッフルステップの始まりが上昇してしまい使いにくそうです。

極小さいカットは効果も少ないですが、カットなしよりかは幾分マシなようです。

可能であれば、自作予定のエンクロージャーに合わせてその都度シミュレーションするのが良さそうです。

 

個人的感想(Waveguide)

以下はWaveguideを使用したスピーカーの実測特性です

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左が市販Amphion、右が自作(WG148R使用)です。

同様に軸上(黒線),水平30度(青線),水平60度(赤線)です。

 

特に軸外特性に反射波が入り細かいリップルが出てしまっていますが、おおよそ制御されている様子は見て取れると思います。

ウーファーとのつながりも考えると、2WAYはもうWaveguideで良いんじゃないかなぁ(適当) 

参考

今回カットの角度は45度で固定ですが、この角度を浅くしたり深くしたりする事も考えられます。

適当にシミュレートした感じでは、45度よりやや浅いカットのほうが良さそうです。(適当)

この角度について、海外で実測されているサイトがあります。

Schräge Fasen