スピーカーのバッフル形状と水平指向特性データ

 

はじめに

Twitterの方で斜めカットバッフルを見かけたので、今まで自分で測定したスピーカーの指向特性についてデータを載せておきます。

指向特性は反射音やドップラー歪等の観点から綺麗に制御することが望ましいようです。各個人の聴感や好みの差は分かりません。

 

良く分かってない部分も多いので、間違いあれば指摘していただけると嬉しいです。

バッフル形状と指向性の実践的な面については、このサイトが大変参考になりました。

Heissmann-Acoustics

 

スピーカーの仕上がりの指向特性は、ユニットそもそもの指向特性+バッフル(と箱)の特性になるので、なかなか厄介です。

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平面なバッフルスピーカー

実際にどんな特性になるかですが、まず自作2WAYの2作目です。

この頃は指向性など全く考慮もしていなかったので、適当に作り(作ってもらい)ました。

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右のグラフが軸外特性で、見方は色の明るさが音圧の高さ、横軸は周波数で縦軸は軸外角度です。

縦軸センターが軸上特性で、上下に行くほど水平方向に角度が付いた位置(±90度まで)での音圧特性になります。

 

さて、指向特性を考慮せずスピーカーを作ると、見ての通りあまり綺麗でない軸外特性になり、この図でいう3kHz40度付近のような(バッフル幅等によって周波数、角度は変わります)、軸外に音圧ピークが出来てしまいます。

また、ウーファー側の指向特性がクロス領域(2kHz)で明確に狭まり、段差が出来てしまっています。

 

軸外のピークは、バッフルを極端に広くしたりクロス周波数を高くすることで解消出来ますが、自由度の低い2WAYでは少し厳しい方法です。

また、バッフルの角を落とすことによっても、多少は改善されます。

a116-113.hatenablog.com

 

掲載の特性は自分のスキル不足の部分も多々あり、平面なバッフルでもユニットやクロス周波数を上手く選ぶことで、ある程度綺麗な特性を実現されている方もいらっしゃいます。

 

Waveguide使用スピーカー

次に自作2WAYの3作目です

Twitterの方で、ツイーターの前にWaveguide(ウェーブガイド、小さいホーン)付ければば指向性制御できるゾ、という話を伺ったので昨年頭にVisatone製Waveguide WG148Rを輸入し作ってみました。

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Waveguideの装着されてたツイーター領域については、綺麗に軸外特性が制御されています。

指向性他、いくつかの利点からメーカー製でもWaveguideの使用が増えているようです。

 

一方で、上のスピーカーよりだいぶ改善されたとはいえ、まだクロス周波数2kHz付近での繋がりに少し段差が出来てしまっています。

ツイーターが強力であれば、クロス周波数を下げることで、綺麗に繋がった特性を実現できそうです。

 

バッフル斜めカットスピーカー

自作2WAY 4作目はバッフル斜めカットです。

Waveguideは上手く作らないと軸上特性が派手に乱れることもあるので、バッフルが2段階で曲がるよう斜めにカットすれば軸外ピークの出る周波数を分散できないかと試してみたものです。

 

この角を無限に多くしていけばラウンドバッフルになります。

バッフルの製作に当たってはTwitterのだしさんに大変お世話になりました。

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平面なバッフルのように軸外に酷いピークが出ることはなくなりました。特定周波数で派手に広がることなく分散しています。

とはいえ見ての通りWaveguideほどきれいに制御は出来ず、ウーファーとの繋がりも良くありません。

 

さらに角を増やせば、より滑らかにはなりそうですが、ウーファーとのつながりを考えると2WAYでバッフルカットによる制御には限界がありそうです。

 

市販Waveguide使用スピーカー

最後に、市販のWaveguide使用スピーカーAmphion Helium2です。

現在メインのスピーカーで、特性、音の好みともに文句が無いので自作をする気力がなくなりました。

ウーファー(Peerless)の特性は価格なりですが、ツイーター(Audax)及びメーカー製の強みであるバッフル一体型Waveguideは素晴らしいです。

 

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大変よく制御されています。一つ残念な点はこのスピーカーはネットワークの関係で1.2kHzに鋭いディップが出来てしまっているところです。

 

Waveguideを使用した自作と明確に異なる点は、ツイーター領域の軸外音圧が周波数によらずほぼ等しい点です。

10年以上前の製品ですが、指向性制御を明確に意識したメーカー製品は流石の出来のようです。

 

個人的感想

バッフル形状によって軸外の繋がりを改善する場合、ウーファーの指向性を広げる事は困難なので、ツイーターのクロス付近の指向性を制御(狭める)することになると思いますが、この点でWaveguideという選択は有効そうです。

またWaveguideは、単純形状のバッフルで起こる軸外のピークを防ぐことも出来そうです。

 

3WAY以上では各ユニット指向性の十分に広い領域で繋げることが容易になることから、Waveguide以外にも斜めカットバッフル、ラウンドバッフルなどでの対策が可能になりそうです。