スピーカー用コイルの測定 (7)線径によるRs周波数特性の差異
スピーカー用コイル測定記事の一つですが、一記事ずつ見ても分かりにくいので(1)の概要記事から辿っていくことをお勧めします。
測定した各コイルの紹介は(2)の記事にあります。
概要
まとめを書いている途中に線径によるRsの差異について確認をしていないことに気が付いたので、追加でコイルを購入し測定しました。
一般的にコイルのRs(等価直列抵抗)を考えるとき、線の太いコイルほどDCRが下がりRsも下がるだろうという考えになると思います。
これはRs≒DCRとなる低域においても正しいですが、(3)記事の測定で周波数の上昇とともにRsも大きく上昇することが分かったため、高域においても通用するものなのか確認が必要になりました。
線径の違うコイルのRs測定
今回測定に用いたコイルは以下のものです。
左は今までの測定でも使用したJantzen 空芯18AWG、右2つは今回の測定用に追加したJantzen 空芯17AWGと空芯15AWGで、全て1.2mHです。
DCRは実測で18AWGが0.58Ω、17AWGが0.42Ω、15AWGが0.32Ωで当然ですが線の太い15AWGの方が低くなっています。
この3つをスイープ測定した結果が以下のグラフです。
上の線はインダクタンス、下の線がRsです。
当然ながら低域では太い15AWG(赤)が有利ですが、2kHz付近から細い17AWG(橙)、更に細い18WG(青)の方がより有利になります。
またインダクタンスも18AWGが最も平坦に近くなっています。
この測定のみから判断すれば高域側ネットワークでは細い線のコイルを使ったほうが有利になりそうです。
逆転の理由については表皮効果などが考えられますが(3)の記事と同じく詳しくは分かりませんし考察する気はありません。
細ければ細いほど有利というわけでは決してありません。
そもそものDCRが上昇すればRsの逆転する周波数はより高域にシフトします。
また許容電流、発熱についても考慮が必要です。
線径の違いによるものかの確認
上の測定ではコイル形状や巻きの違いがRsの上昇カーブに影響している可能性を排除できませんので、Jantzen 15AWGと比べ薄く横長に巻かれているMundorf 空芯 15AWG 1.2mHも測定しグラフに追加しました。
また参考にTANGO リッツ線のデータも追加しました。
結果は以下の通りです。
Jantzen15AWG(赤)とMundorf 15AWG(紫)がほとんどぴったり一致しています。
この事からコイル形状の違いによるRs上昇カーブへの影響はほとんど無いことが推測できます。
ちなみに同線径同インダクタンスの空芯コイルのDCRは、一般的な巻き形状をしていれば(極端に変わった形状でない限り)メーカーに関わらず近い値になります。
これは空芯コイルのインダクタンス算出式を見れば予想できると思います。
リッツ線(緑)は細い銅線を撚ったもので、もしコイルのDCRが同程度であれば可聴範囲全帯域で最も有利なことがわかります。