スピーカー用コイルの測定 (8)まとめ

 

スピーカー用コイル測定記事の一つですが、一記事ずつ見ても分かりにくいので(1)の概要記事から辿っていくことをお勧めします。

測定した各コイルの紹介は(2)の記事にあります。

概要

今までの記事の測定結果等のまとめです。

間違いなどあれば指摘していただけると嬉しいです。

 

コア入りコイルについて

まず低域のRsが低い点は空芯と比べてコア入りコイルの圧倒的なメリットです。

ユニットの制動に直列コイルのRsが低い事は大変重要ですので、この点は大きなアドバンテージです。 

 

一方で各測定から、コア入りコイルは歪みや信号レベルによるインダクタンス変化などが見られました。 

特定のコイルが優位ということは無く、どれも一長一短といった感じです。

 

購入前に特性を推測しようにもメーカー側が材質などの詳しい情報を公表おらず、特性を推測することも難しいでしょう。

実際にコア入りコイルがどのような特性になっているのかを知るには、現物を測定してみるしかないと思います。

 

空芯コイルについて

空芯についてはコア入りのような各種懸念は無く、ただ一点巻数が増えることによって低域でRsの高い点のみが欠点となりそうです。

低域用にはDCRを出来るだけ低くし、中高域用ではリッツ線のように有利な特性を得られる線材を選択する位ですので、選ぶ上では楽です。

今回の測定のみから判断すれば、低域用でも巨大な空芯コイルを買うことが出来れば、サイズ的、コスト的なものを除いてデメリットは恐らくほぼありません。(線間容量の影響等は多少出るかもしれません)

 

線材について

まず単線は価格、入手性の面で最も優れており、特性的にも無難です。 

リッツ線が、スピーカー用コイルに使用する線材として全帯域で最も良くに見えます。ただ現行では空芯のみ1,2種ほどしか見つからず、価格や入手性も悪いので単線でも十分かもしれません。

箔巻きコイルは周波数によるインダクタンス変動があり、高域特性は単線よりかはましでしたがリッツ線に劣るため、際立った優位性は今回の測定では見出すことが出来ませんでした。

 

単線コイルの線径について

Rsの測定結果からすると低域ではDCRの低くなる太い線のほうが有利ですが、およそ数kHz以上の高域から細い線が有利になるようです。

このことから高域用ユニットのコイルは無理に線の太いものを買う必要が無く、コスト、スペース削減が期待出来そうです。 

細すぎる場合にはそもそものDCR上昇によるRs逆転周波数の上昇、許容電流や発熱によるRs上昇等を考慮する必要はあります。

 

 

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まとめ

中高域用ユニットにコア入りコイルを使うメリットは無さそうで、低域用にコア入りを使うか空芯を使うかの選択となりそうです。

特性のみを考えれば低域も巨大な空芯コイルが一番になりますが、もちろんコストとサイズの観点からすればコア入りが有利ですから、これは各々の判断とするほか無さそうです。

線材はリッツ線が一番ですが、入手が難しいので単線が無難そうです。箔はリッツ線が入手できない場合、高域用には良いかもしれません。

 

最後に言い訳をしておくと、当然ですが今まで測定した以外にも音に関わる要素は多々あると考えられます。

あくまで今回測定できた要素についてのみで判断しているに過ぎません。

各人の好み、音質の良し悪しについては特性の良し悪しと合致する訳でもなく、結局のところ趣味なので好みで選べばいいと思います。