スピーカー用コイルの測定 (3)インダクタンス、Rs特性
スピーカー用コイル測定記事の一つですが、一記事ずつ見ても分かりにくいので(1)の概要記事から辿っていくことをお勧めします。
測定した各コイルの紹介は(2)の記事にあります。
概要
今回はコイルのL、Rsについてです。
LCRメーターの自動スイープ測定機能を利用して、各コイルの基本的なファクターであるL(インダクタンス)、また品質を表すRs(等価直列抵抗)を測定しました。
インダクタンス周波数特性が平坦なほど、Rsは低いほど、コイルとして理想に近いということになります。
コイルの品質は本来Qで表すべきですが、感覚的に分かりやすいRs(等価直列抵抗)で表しました。
製造ロット等で変化しそうなインダクタンス値の誤差については参考程度に見てください。
測定方法
コイルを数十Hzから数十kHzに渡って定電圧あるいは定電流で測定することは難しいので、LCRメーターの自動スイープ測定に任せました。
10Hz~50kHz、ログ100点自動測定、測定電圧は何となく2.83Vrmsですが注意点があるので記事の一番下を参照してください。
インダクタンス特性
まずはインダクタンス特性です
前記事の通りトロイダルは公称1.5mH、箔は公称1mH、他は1.2mHです。
100Hz付近の段差や10kHz付近のディップは測定器由来の物です。
空芯系のコイルやJantzenコア、コイズミ コアは比較的安定していますが、 空芯でも箔コイルは中域で10%近く変動しています。
ERSEコアやJantzenトロイダルコアは変動が目立ち、特にトロイダルはインダクタンスの公称との誤差が大きく数kHzより上で一気に低下しています。
このあたりの誤差は信号電流による影響も大きいので、(5)の記事で別途測定を行います。
実際の使用状況を考えるとクロスオーバー周波数付近での誤差が一番の問題であり、そこから離れるほど誤差の影響も減っていきます。
Rs特性
次にコイルのRs特性です。
理想コイルはRs=0Ωであり、Rsが低いほど理想に近いコイルということになります。
測定レベルによる変動はあまりありませんでした。
やたら見にくいのはPCスキル不足によるものなので勘弁してください。
低域ではコア入りが圧倒的に有利ですが中高域では空芯コイル、その中でも線の細いものが有利になるようです。
箔巻き、リッツ線は数kHz以上での上昇が少ないことが分かります。
もちろんLPF使用帯域内にユニットのFsを含む場合はその周波数での制動に最もRsの影響が出やすいので、コイルの使用帯域などを検討して選ぶ必要がありそうです。
抵抗比特性
次は抵抗比特性(Rs/DCR)です
実際にコイルを使う上で値そのものにあまり意味は無いですが、線材やコアの違いがどのように影響を与えているかを知ることが出来ます。
雑な言い方をすればDCRが同じだった場合に各コイルのRs特性の関係はどうなるかといったものです。
一見してJantzenトロイダル、ERSEはコアの影響を大きく受けているようです。
単線コイルは細いほど抵抗比では有利なようです。表皮効果や近接効果などの影響が考えられますが詳しくは分かりません。
また箔巻は中域で単線より不利、高域で単線より有利という傾向を示します。コンデンサのような構造による影響かもしれません。
リッツ線は可聴範囲全帯域で最も有利なようです。ただしこれはあくまで今回測定のTANGOの特性で、撚り数などで変わることに注意してください。
注意点
設定信号レベルは2.83Vrmsですが実際にはLCRメーターの出力インピーダンスとHPF(コイル両端から見て)を形成していますので、測定時のコイルの印加電圧は以下のような特性になっています。
カットオフがおよそ15kHzの1次HPF特性になっているのでLCRメーターの出力インピーダンスは約100Ωのようです。
また100Hz付近以下で測定レンジが変わるようです。これは測定結果にも現れています。